Burnt Umber Amber

あまおかさんのブログ。

 牛肉で干し肉

217 :ななしの珍味 :2009/03/26(木) 02:30:31 id:jyKoaHAz
ビーフジャーキーのスレに書いたネタだけど、牛肉で生ハム的干し肉を作ったよ。
ブレザオーラという、イタリアの郷土料理だそうな。
作り方は以下の通り。

【ブレザオーラ-(1)】
牛もも肉を用意。できれば1ブロックは1kg以上あるといい。1.5kgくらいあると嬉しい。
できるだけ脂肪がない肉塊がいいんだけど、牛もも肉でも1kgオーバーになると
結構な量の脂身が付いている。これをペティナイフなどで掃除して、脂身は極力外す。
脂身は確かに肉の旨味の元なんだけど、干す場合、これが参加して臭みを出し、味を落とすのも確か。
逆に、極力脂身を取り外してしまったほうが、肉本来の旨味が楽しめる。大切な下拵えだ。
脂身は総重量の10%くらいあったりするので、できるだけ大きな肉塊を使ったほうがいいわけね。

次に、フォークなどでぷすぷすと穴を開ける。これは中心のほうに味を染みこませるため。
肉塊1.5kgに対して、砂糖を大さじ1くらい。これを肉塊の表面に満遍なくすり込む。
塩も使うけど、砂糖のほうが分子が小さいから、料理のさしすせその基本通り先に砂糖から。
この砂糖を多くしすぎると、甘くなりすぎて美味しくない。大さじ1でも多い、もっと減らしてもいい、というくらい。
砂糖の替わりに赤ワインをちょっと、とかでもいいかもしれない。

砂糖の次に塩。粗塩でいい。これを1.5kgに対して二掴みくらい。とにかくびっちりと全体にすり込む。
ざりざりするくらいすり込んでOK。
すり込んだら今度は黒胡椒。ホール(粒)の奴をすり鉢であたるかフードプロセッサで粗く潰して、
肉塊全体を包み込むくらいにビシィーっとすり込む。パウダーになっちゃってる奴より、自分で粗く挽いたほうが旨し。
外れにくいし。


218 :ななしの珍味 :2009/03/26(木) 02:40:20 id:jyKoaHAz
【ブレザオーラ-(2)】
黒胡椒をすり込んだら、今度はこれをジップロックに入れる。
気密さえしっかりしてれば百均のでもいい。このとき、ぎっちり閉めて必ず余分な空気を抜く。
ここまでできたら、冷蔵庫に入れる。

二〜三日寝かすと水分が出てくるんだが、この水分は捨てない。拭き取らない。
そのまま水分の中で泳がせつつ、ジップロックの中に残った僅かな空気を抜くのに使う。
空気が抜けたら、余分な水分は多少捨ててもいい。とにかくエア抜き優先。
毎日ジップロックの向きを変える。卵で言えば転卵。

この状態で一週間から2週間くらい放置。肉を転がすのは忘れずに。
肉塊が1.5kgくらいから始めた場合、2週間放置なんだが、2週間くらい経ったらジップロックから出す。
この時点で、水分はだいたい300g以上抜けてる。
ここで、肉の表面の水分をキッチンペーパーなどで丁寧に拭き取る。
肉は洗わないし、塩抜きもしない。拭き取ったときに黒胡椒粒が剥がれちゃうようだったら、
この段階で追い胡椒をしてもよし。

この肉塊をたこ糸などで成型する。成型しないほうが熟成は早い。理由は後述。
この後も水分は抜け続けるので、たこ糸で成型した肉塊をキッチンペーパーでぴっちり包む。
ここまできたら、冬場なら風通しのいいところに干す……ということになるんだが、オールシーズン食いたいので、冷蔵庫を使用。
百均に行くと網付きバットを売ってると思うので、適当な網付きバットを用意。
うちでは皿を立てて収納するポリプロピレンスノコ+バットを利用した。
このまま、冷蔵庫の庫内で熟成開始。

キッチンペーパーは肉塊の水分を吸って毎日しっとりするので、しっとりしなくなるまでは毎日交換する。
だいたい5〜一週間くらいで表面からは水分が滴ってこなくなる。
ペーパー替えするときに表面がカサカサっと乾燥してたら、後はもうキッチンペーパーは使わなくてよい。
そのまま熟成続行。


219 :ななしの珍味 :2009/03/26(木) 02:51:16 id:jyKoaHAz
【ブレザオーラ-(3)】
どのくらい熟成させるか、なのだが、これはたこ糸成型をしたかしないかで変わる。
たこ糸成型をすると肉塊の形が円柱に近くなり、肉塊の直径が大きくなる。
冷蔵庫内熟成ではなくて、軒下にぶら下げた場合も同様に丸くなるので、
肉塊の中心部の水分が抜けてくるのに時間が掛かる。
たこ糸成型しないで冷蔵庫のスノコ/網の上にでんと置いて熟成させると、
肉の自重で肉塊がレンガのような平たい塊になる。このため、肉の中心部までの径が短くなるので
熟成期間は若干短くなる。

1.5kgの肉からスタートした場合、仕込みが終わった時点で1.2〜3kg、乾燥が進むと1.1〜1kgくらいになる。
1.5kg肉塊をたこ糸成型しない場合は、だいたい2〜3週間目くらいから食べられる。
目安として、一番外側から内側に向かって7〜8mmから1cmくらい黒っぽくあめ色になっていて、
それより内側はしっとりと深い紅色になっている状態というのが、上手にできた状態。
生肉の血の滴る生々しさはなくなって、しっとりした半生肉、という感じに仕上がる。
豚肉から作る生ハムやプロシュットに比べて、牛肉から作った分、仕上がりは色が濃い。

完成後の保存はジップロックに入れて冷蔵庫へ。そのままにしとくと、どんどん乾燥=熟成が進んでしまい、
美味しい紅色の芯が減ってしまうので。もちろん、外側の漆黒の部分も美味しいよ。
完成からだいたい1〜2カ月以上は楽しめる。
時間が経ってくると、脂身が残ってたところは脂臭さが強くなってしまうので、
脂身があるところを先に食べ始めたほうがいいかもしれない。

できるだけ薄く削ぐようにして切ったものに、レモン汁、オリーブオイル、塩を振って食べるのがベター。
また、肉塊の切り口部分は、そのままにしておけばまたゆっくりと乾燥して皮膜になる。

ブレザオーラはイタリアンではアンティパストにするらしい。日本国内では商品としては流通してないので、
自分で作るか、自家製している本格イタリアンレストランに行くしかないんだが、
手間も大して掛からず、自分で作れば材料を差し引いても安上がり。
豚干し肉も作ってるけど、干し肉感で言えばブレザオーラに軍配が上がるよ。

冷蔵庫に飽きがあれば季節問わず作れるのでお奨め。専用冷蔵庫が欲しくなるよw

220 :ななしの珍味 :2009/03/26(木) 02:57:21 id:jyKoaHAz
ブレザオーラは最終的に加熱/燻蒸はしないのが本式なんだそうで、うちでも燻製はしてない。
桜やヒッコリーあたりのスモーキーな香りもいいかもしれないけど、それって肉の香りじゃなくて
煙の臭いなので。逆に、肉の臭い(脂身の臭い)がきついと思ったなら、臭い消しの意味で
燻蒸するのはありかもしれないね。

とにかく徹底的に脂肪を取ること。肉の掃除/下拵えはきっちりと。
取った脂身は煮込んでヘットでも作ればよし、というか。
刻んで料理に使うと、「肉がどこにもないのに牛肉の味がする何か」ができる。

ところで基本は生食するブレザオーラだけど、パスタに入れたりサンドイッチにしたりしてもうまい。
できるだけ薄く削ぐ、塊にしたり分厚く切らない、という基本さえ守れば、使い途は多い。

ガチガチに乾燥させない系牛生干し肉ということで、以上ブレザオーラのご紹介でした。